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レトロさんぽと巡る 昭和の銭湯——足元に広がるタイルの世界

床旅

レトロさんぽと巡る 昭和の銭湯——足元に広がるタイルの世界

2026.10.19 (最終更新日:2026/10/19)

レトロ建築を年間300軒巡る、レトロさんぽです。

私がレトロな銭湯を好きになったきっかけは、昔の銭湯をリノベーションしたカフェとの出会いでした。

浴槽や蛇口、温度計など、かつての面影を残す空間に惹かれ、なかでも夢中になったのがレトロタイルです。

水を扱う銭湯では、床や浴槽、壁など、さまざまな場所にタイルが使われています。

色も形も模様も異なるタイルを、一つの建物の中でいくつも見つけられるのが、銭湯巡りの楽しいところ。

一枚一枚をじっくり眺めていると、つい時間を忘れてしまいます。

今回は、3つの銭湯建築 を巡り、特に床に使われているタイルに注目してみました。

昔の姿を残しながら生まれ変わった「鷹取温泉」

神奈川県にある「鷹取温泉」は、約60年にわたり親しまれてきた銭湯。

2019年に惜しまれながら廃業しましたが、その後リノベーションされ、現在はレンタルスペースや、夜にはバーとして活用されています。

鷹取温泉の看板が残るレトロなビルの外観
鷹取温泉のある、味わい深いレトロビル。
鷹取温泉の女湯と男湯の扉が並ぶ通路
女湯と男湯の扉。鏡に残る「鈴木歯科医院」の文字にも、時代を感じる。

銭湯がある古いビルの階段を上がると、「女」「男」と書かれた扉が現れます。

大小の石で飛び石のような模様が描かれた鷹取温泉の通路
まるで日本庭園の飛び石のよう。
銭湯へ続く通路にも、ちょっと風流な景色。

その手前の通路には大小の石が配され、日本庭園の飛び石を思わせる床が続いています。

海辺の風景を描いたモザイクタイルが残る鷹取温泉の男湯
壁や柱、天井から床まで。
サイズも色もさまざまなタイルで埋め尽くされた空間。
人魚を思わせる女性たちが描かれた鷹取温泉のモザイクタイル
男湯の壁を彩るのは、人魚を思わせる女性たちのモザイクタイル。

男湯は、ほとんどが当時の姿のまま残されています。

壁一面を覆う小さな豆タイルには、左側に人魚を思わせる女性たち、右側に異国の海辺のような風景が描かれており、水にまつわるモチーフが、銭湯の空間によく似合います。

鷹取温泉の洗い場に並ぶ小さな緑色の椅子
洗い場に並ぶ、小さな緑色の椅子。想像以上の低さにびっくり!

洗い場に並ぶ椅子は、子ども用かと見間違えるほど小ぶり。当時の人はどう座っていたのか気になってしまいます。

一枚ごとに異なる色合いが浮かぶ鷹取温泉の床タイル
男湯の床タイル。いくつもの色が浮かぶ不思議なタイル。

一見すると白一色に見える床のタイルも、近くで見ると印象が変わります。

タイルは一枚一枚色味が異なり、さらに一枚の中にもグラデーションのような色の変化が。遠くから見るのとはまた違った表情を楽しめます。

岩と曲線を描く縁が残る鷹取温泉の浴槽
浴槽の片隅の岩や、くねっと曲がる浴槽の縁が素敵。
青い小石を敷き詰めたような鷹取温泉の浴槽の床
青い石が敷き詰められた浴槽の底。

浴槽の床にも注目です。

青い小石を思わせる模様が一面に広がり、かつて水が張られていた頃は、その輪郭がゆらいで、川底のように映ったのかもしれません。

手裏剣のような模様が連なる鷹取温泉のレトロタイル
浴室と脱衣所をつなぐ足元には、手裏剣を思わせるユニークなタイル。

浴室から脱衣所へ向かう途中には、手裏剣のような模様のレトロタイルが並んでいました。

ちょっぴり不思議で可愛らしいデザインに、思わず写真をパシャリ。

昔ながらのロッカーや洗面台が残る鷹取温泉の男湯脱衣所
使われていた頃の姿をとどめる、ロッカーと洗面台。
盗難防止に関する注意書きが残る鷹取温泉のロッカー
扉の裏に今も残る注意書き。

脱衣所には、昔ながらのロッカーや洗面台が残されています。

ロッカーの扉の裏をのぞくと、盗難に関する注意書きがあり、「鍵のかゝり具合」と記された古い表記まで愛おしく感じます。

鷹取温泉の女湯脱衣所を活用したレトロな雰囲気のバー
女湯の脱衣所だった空間は、今では雰囲気たっぷりのバーに。
鷹取温泉の女湯の浴槽を活用したステージ
かつてお湯が張られていた女湯の浴槽は、ステージに。

女湯はリノベーションされ、かつて脱衣所だった場所は、現在バーとして活用されています。

浴室では、浴槽がステージへと生まれ変わり、かつて湯船につかりながら眺めていたであろう風車のある風景を描いた豆タイルも、今ではステージを彩る背景になっています。

タイル張りのカウンターに置かれたアイスとお酒
お風呂上がり気分で、アイスとお酒を。

夜は、赤いランプが灯る空間で少し大人なひとときを。

昭和レトロな柄の器に盛られたアイスと、オーナーさんが「飲みやすいですよ」とすすめてくれたお酒をいただきました。

格式ある銭湯建築を味わう「子宝湯」

歴史的建造物を移築・復元し、保存・展示する野外博物館「江戸東京たてもの園」。

その一角にあるのが、かつて足立区で営業していた銭湯「子宝湯」です。

1929年(昭和4年)に建てられ、1988年(昭和63年)まで人々に親しまれてきました。

これが銭湯とは! 思わず足を止めて眺めたくなる、立派な外観
これが銭湯とは! 思わず足を止めて眺めたくなる、立派な外観。

銭湯の正面を飾るのは、堂々とした唐破風。大きく弧を描く屋根が、町の銭湯とは思えないほど華やかです。

さらに脱衣所を見上げれば、四角い升目が連なる折り上げ格天井。

入口から天井まで、当時の銭湯建築の見どころがぎゅっと詰まっています。

「男湯」「女湯」の文字と高砂のタイル画が残る子宝湯の入口
女湯・男湯の文字が残る、昔ながらの銭湯の入口。

入口をくぐると、「高砂」の翁と嫗を描いたタイル画がお出迎え。

その右手には女湯、左手には男湯へと続くガラス戸が並んでいます。

子宝湯の入口に敷き詰められた茶色の六角形タイル
入口の足元に広がる六角形のタイル。

六角形のタイルが敷き詰められた足元や、艶のある天井など、入口から気になるものが多すぎて、なかなか先へ進めません。

富士山のペンキ絵とタイル画が飾られた子宝湯の浴室
高い天井に、大きな富士山。開放感たっぷりの浴室。

壁一面に広がるのは、銭湯の定番ともいえる富士山のペンキ絵。

さらに洗い場にも目を向けると、男湯と女湯で異なるタイル画があしらわれています。

脱衣所から浴室まで八角形の床タイルが続く子宝湯
脱衣所から浴室まで続く床タイル。

浴室の床には、八角形のタイルが整然と並んでいます。

派手すぎないすっきりとしたデザインが、子宝湯の格式ある雰囲気によく似合い、空間全体を上品に見せています。

八角形の床タイルと水色の浴槽タイルが並ぶ子宝湯の足元
八角形の床タイルと、さわやかな水色の浴槽の床タイル。
脱衣かごと折り上げ格天井が残る子宝湯の脱衣所
脱衣所の天井には、格調高い折り上げ格天井。
昔の店舗広告と折り上げ格天井が残る子宝湯の脱衣所
眺めて楽しい、個性豊かな昔の広告。

脱衣所にずらりと並ぶ昔の広告は、子宝湯の中でも私のお気に入り。

スナックや時計店などの広告から、当時の暮らしの気配が伝わってくるようです。

海のモチーフにときめく「十條湯」

1949年(昭和24年)創業の老舗銭湯「十條湯」は、昭和の面影を残す昔ながらの銭湯です。

一時はコロナ禍で存続の危機に立たされましたが、クラウドファンディングで多くの支援が集まり、今も現役の銭湯として、多くの方に親しまれています。

併設された「喫茶深海」もレトロな雰囲気たっぷりで、銭湯とあわせて楽しめます。

青空の下に並ぶ十條湯と喫茶深海の外観
青空の下に映える、十條湯と喫茶深海のレトロな外観。
魚の群れを描いたモザイクタイルが広がる十條湯の女湯
女湯の壁を泳ぐ、モザイクタイルの魚たち。
二羽のコウノトリを描いたモザイクタイルが飾られた十條湯の男湯
男湯の壁には、大きく羽を広げる二羽のコウノトリ。

十條湯の浴室の壁には、モザイクタイルがびっしりと敷き詰められ、男湯にはコウノトリ、女湯には「喫茶深海」の店名を連想させる、海を泳ぐ魚たちが描かれています。

星のような模様が連なる十條湯の床タイル
足元に散りばめられた、星のようなタイルたち。
光を受けて七色にきらめく十條湯の床タイル
光の加減で、七色に表情を変える床タイル。

足元を見ると、星のような模様が連なるレトロタイルが。

面白いのは、見る角度を変えると、星の部分が七色にきらめいて見えること。貝殻の内側のような美しいタイルに、惚れ惚れしてしまいます。

カニの模様があしらわれた十條湯の排水溝
見逃し注意!排水溝に潜むカニ。

足元をじっくり眺めていると、排水溝にカニを発見。 何気ない場所にまで、海のモチーフが隠れていて、小さな遊び心にときめきます。

木製のカウンター席が並ぶ十條湯併設の喫茶深海
「十條湯」併設の「喫茶深海」の店内。

「喫茶深海」は、銭湯に入らなくても利用できます。それでも、せっかくなら銭湯も喫茶もどちらも満喫したいところ。

喫茶深海の青いクリームソーダと深海ゼリー
透き通る青がきれいな、深海ゼリーとクリームソーダ。

今回は、名物の深海ゼリーと、金魚鉢のようなグラスに入った青いクリームソーダをいただきました。

どちらも見た目から涼しげで、湯上がりにはもちろん、暑い夏の日にもぴったりです。

足元に注目すると銭湯巡りはもっと楽しい

今回は、3つの銭湯建築を足元に注目しながら巡ってみましたが、いかがだったでしょうか。

それぞれに違ったレトロタイルが残され、遠くからでは気づかない色や模様、小さなこだわりを見つけることができました。

みなさんもぜひ、いつもより少しだけ足元に目を向けて、小さなときめきを探してみてくださいね。


レトロさんぽさんのInstagram

今回ご紹介した純喫茶の投稿は、レトロさんぽさんのInstagramでもご覧いただけます。

https://www.instagram.com/p/DeoUAUYE0Ft/?utm_source=ig_web_copy_link&mdxt=NTc4MTIwNjQ2YQ==

レトロさんぽさんのInstagramでは、ほかにも全国各地のレトロ建築を数多く紹介されていますので、ぜひあわせてご覧ください。

https://www.instagram.com/retro_sanpo_/

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レトロさんぽ | 堤じゅり

レトロさんぽ | 堤じゅり

レトロなものの魅力を発信する「レトロさんぽ」。着物や古着で年間300棟以上の建築を巡り、建築や純喫茶、ジュエリーなど時代を超えて残る美しさを紹介。『キュン!するレトロ建築』著者。
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