
レトロ建築を年間300軒巡る、レトロさんぽです。
私がレトロな銭湯を好きになったきっかけは、昔の銭湯をリノベーションしたカフェとの出会いでした。
浴槽や蛇口、温度計など、かつての面影を残す空間に惹かれ、なかでも夢中になったのがレトロタイルです。
水を扱う銭湯では、床や浴槽、壁など、さまざまな場所にタイルが使われています。
色も形も模様も異なるタイルを、一つの建物の中でいくつも見つけられるのが、銭湯巡りの楽しいところ。
一枚一枚をじっくり眺めていると、つい時間を忘れてしまいます。
今回は、3つの銭湯建築 を巡り、特に床に使われているタイルに注目してみました。
もくじ
昔の姿を残しながら生まれ変わった「鷹取温泉」
神奈川県にある「鷹取温泉」は、約60年にわたり親しまれてきた銭湯。
2019年に惜しまれながら廃業しましたが、その後リノベーションされ、現在はレンタルスペースや、夜にはバーとして活用されています。


銭湯がある古いビルの階段を上がると、「女」「男」と書かれた扉が現れます。

銭湯へ続く通路にも、ちょっと風流な景色。
その手前の通路には大小の石が配され、日本庭園の飛び石を思わせる床が続いています。

サイズも色もさまざまなタイルで埋め尽くされた空間。

男湯は、ほとんどが当時の姿のまま残されています。
壁一面を覆う小さな豆タイルには、左側に人魚を思わせる女性たち、右側に異国の海辺のような風景が描かれており、水にまつわるモチーフが、銭湯の空間によく似合います。

洗い場に並ぶ椅子は、子ども用かと見間違えるほど小ぶり。当時の人はどう座っていたのか気になってしまいます。

一見すると白一色に見える床のタイルも、近くで見ると印象が変わります。
タイルは一枚一枚色味が異なり、さらに一枚の中にもグラデーションのような色の変化が。遠くから見るのとはまた違った表情を楽しめます。


浴槽の床にも注目です。
青い小石を思わせる模様が一面に広がり、かつて水が張られていた頃は、その輪郭がゆらいで、川底のように映ったのかもしれません。

浴室から脱衣所へ向かう途中には、手裏剣のような模様のレトロタイルが並んでいました。
ちょっぴり不思議で可愛らしいデザインに、思わず写真をパシャリ。


脱衣所には、昔ながらのロッカーや洗面台が残されています。
ロッカーの扉の裏をのぞくと、盗難に関する注意書きがあり、「鍵のかゝり具合」と記された古い表記まで愛おしく感じます。


女湯はリノベーションされ、かつて脱衣所だった場所は、現在バーとして活用されています。
浴室では、浴槽がステージへと生まれ変わり、かつて湯船につかりながら眺めていたであろう風車のある風景を描いた豆タイルも、今ではステージを彩る背景になっています。

夜は、赤いランプが灯る空間で少し大人なひとときを。
昭和レトロな柄の器に盛られたアイスと、オーナーさんが「飲みやすいですよ」とすすめてくれたお酒をいただきました。
格式ある銭湯建築を味わう「子宝湯」
歴史的建造物を移築・復元し、保存・展示する野外博物館「江戸東京たてもの園」。
その一角にあるのが、かつて足立区で営業していた銭湯「子宝湯」です。
1929年(昭和4年)に建てられ、1988年(昭和63年)まで人々に親しまれてきました。

銭湯の正面を飾るのは、堂々とした唐破風。大きく弧を描く屋根が、町の銭湯とは思えないほど華やかです。
さらに脱衣所を見上げれば、四角い升目が連なる折り上げ格天井。
入口から天井まで、当時の銭湯建築の見どころがぎゅっと詰まっています。

入口をくぐると、「高砂」の翁と嫗を描いたタイル画がお出迎え。
その右手には女湯、左手には男湯へと続くガラス戸が並んでいます。

六角形のタイルが敷き詰められた足元や、艶のある天井など、入口から気になるものが多すぎて、なかなか先へ進めません。

壁一面に広がるのは、銭湯の定番ともいえる富士山のペンキ絵。
さらに洗い場にも目を向けると、男湯と女湯で異なるタイル画があしらわれています。

浴室の床には、八角形のタイルが整然と並んでいます。
派手すぎないすっきりとしたデザインが、子宝湯の格式ある雰囲気によく似合い、空間全体を上品に見せています。



脱衣所にずらりと並ぶ昔の広告は、子宝湯の中でも私のお気に入り。
スナックや時計店などの広告から、当時の暮らしの気配が伝わってくるようです。
海のモチーフにときめく「十條湯」
1949年(昭和24年)創業の老舗銭湯「十條湯」は、昭和の面影を残す昔ながらの銭湯です。
一時はコロナ禍で存続の危機に立たされましたが、クラウドファンディングで多くの支援が集まり、今も現役の銭湯として、多くの方に親しまれています。
併設された「喫茶深海」もレトロな雰囲気たっぷりで、銭湯とあわせて楽しめます。



十條湯の浴室の壁には、モザイクタイルがびっしりと敷き詰められ、男湯にはコウノトリ、女湯には「喫茶深海」の店名を連想させる、海を泳ぐ魚たちが描かれています。


足元を見ると、星のような模様が連なるレトロタイルが。
面白いのは、見る角度を変えると、星の部分が七色にきらめいて見えること。貝殻の内側のような美しいタイルに、惚れ惚れしてしまいます。

足元をじっくり眺めていると、排水溝にカニを発見。 何気ない場所にまで、海のモチーフが隠れていて、小さな遊び心にときめきます。

「喫茶深海」は、銭湯に入らなくても利用できます。それでも、せっかくなら銭湯も喫茶もどちらも満喫したいところ。

今回は、名物の深海ゼリーと、金魚鉢のようなグラスに入った青いクリームソーダをいただきました。
どちらも見た目から涼しげで、湯上がりにはもちろん、暑い夏の日にもぴったりです。
足元に注目すると銭湯巡りはもっと楽しい
今回は、3つの銭湯建築を足元に注目しながら巡ってみましたが、いかがだったでしょうか。
それぞれに違ったレトロタイルが残され、遠くからでは気づかない色や模様、小さなこだわりを見つけることができました。
みなさんもぜひ、いつもより少しだけ足元に目を向けて、小さなときめきを探してみてくださいね。
レトロさんぽさんのInstagram
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