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今井晶子の床ノススメ【床旅⑦:そうだ、京都行こう】

床旅

今井晶子の床ノススメ【床旅⑦:そうだ、京都行こう】

2026.02.16 (最終更新日:2026/01/20)

2021年《ラグリエwebサイトオープン1周年》特別企画インタビューで直接お会いすることが叶い、そのご縁からラグリエ読みもので、今井さん書き下ろしコラムを掲載させていただいています。

今回の床旅は、「奈良・京都」へ床探しに出かけられた、今井さんの床旅レポート。『床旅:京都』編です。

今宵も床追い人、今井晶子さんの世界を
どうぞお楽しみくださいませ。

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「なめたらいかんぜよぉぉ!」
『鬼龍院花子の生涯』という映画で女優・夏目雅子さん演じる主人公が放つセリフ。

7月に閉館してしまった東映最後の直営館「丸の内TOEI」のフロアマット
「丸の内TOEI」の足の下のステキな床マット。見納めとなりました。
いつまでも 撮れると思うな その床を

ずっと見てみたいと思っていたこの作品、7月に閉館してしまった東映最後の直営館「丸の内TOEI」のフィナーレ上映企画でついに鑑賞することができました。昭和から続くお店の閉店ラッシュですが映画館にもその波が。

旧橋本遊郭の妓楼建築「旅館 橋本の香」で味わうレトロな床と建物

その冒頭になにやら見覚えのある景色が。ロケ地はそのうち行ってみたいリストにあった京都・橋本遊郭跡。

いつかそのうちリストが何百もある人生ですが、ついに2025年春に訪問。そもそもは奈良への旅でしたが、その前に京都に寄り道することに。

交通費をかけて行くとなるとあれもこれも詰め込みたくなるのが人情です。

10年ほど前、床情報をもとめて徘徊していたネットの海では、カフェー建築の素敵なタイル床や壁が散見されました。そこから遡って興味が湧いた遊郭跡。

橋本遊郭はその中のひとつでした。今は住宅街の一角となっており、物見遊山で行ってもいい場所なのかわからないままあっという間に時は過ぎ。

旧橋本遊郭の妓楼建築のひとつが改修して宿泊施設として利用できるようになったと何年か前に聞き、ずっと行ってみたかったのです。調べてみると宿泊ではなく見学だけもできる(有料)ということで今回に至りました。

京都・旅館 橋本の香の外観。格子戸と木造建築が特徴の町家風の佇まい。
旅館 橋本の香

橋本遊郭は明治20年に遊郭として許可を得た遊郭らしく、最近は大河ドラマ『べらぼう』で興味を持たれた方達の見学も多いそうです。

京都入りし、最寄り駅から向かうは見学を予約しておいた「旅館 橋本の香」。旧橋本遊郭の妓楼建築「三枡楼」の建物を活かした旅館です。

旅館 橋本の香の玄関内部。色タイルの段差や木彫りの梁、和紙の襖絵などが並ぶ趣深い和風空間。
タイルや木材の使い方が贅沢な式台、上がりかまち、取次

中に入った途端に大興奮。タイル使いも贅沢な広々とした玄関が。もちろん床を撮るべくベストスポットを探ります。

旅館 橋本の香の玄関段差に施された小さなモザイクタイル。角のアール仕上げが美しいレトロなタイル床。
角のアールも素晴らしいタイル床。
橋本の香の玄関のあがり口タイル。
玄関左手のあがり口のタイル床。

玄関で完結しそうな勢いで撮影していましたが、係の方に促され正気に戻り2階へ。

ところが2階でも凝った意匠の部屋部屋にまたしても忘我の状態に。壁にドアに、なんとまあ華やかなステンドグラス。

旅館 橋本の香の2階にある楕円形のステンドグラス。幾何学模様と植物モチーフが組み合わさった鮮やかな装飾窓。
ステンドグラスの一部が開閉式の小窓になっている。
この小窓から顔を見せずにやり取りをしていたのでしょうか
旅館 橋本の香のステンドグラス窓。取り外し可能な小窓を開けて、幾何学模様や植物モチーフの細工を間近で眺めている様子。
ステンドグラスは小窓が開く仕組み。細かな模様まで間近で見られる貴重な意匠。
旅館 橋本の香の2階廊下。丸窓に施されたステンドグラスが壁面を彩り、木調の建具と床が調和したレトロな通路。
丸窓のステンドグラスが目を引く2階廊下。
木調の建具と組み合わさり、落ち着いたレトロな空間をつくり出している。
旅館 橋本の香の2階廊下。梅の意匠を施した襖と、葵形の透かし窓が並ぶレトロな和風の空間。
梅の装飾や葵形の透かし窓が残り、昔ながらの趣が漂う空間。
旅館 橋本の香の2階廊下。色ガラスをはめ込んだ建具が並び、レトロな意匠が続く細長い通路。
2階廊下には色ガラスを使った建具が並び、どこを切り取っても美しいレトロ空間が続く。
旅館 橋本の香の天井意匠。扇のように放射状に広がる木組み天井と、その下に並ぶ色ガラスの欄間。
放射を描く天井は扇のよう

 2階に床は…と探したところ浴室・トイレで発見。部屋に無くとも水まわりに良いタイルがあることがあります。あきらめずにチェックすべしです。

旅館 橋本の香の水まわり空間。『小便』と書かれた欄間ガラスと木製引き戸が残り、奥にはモザイクタイル床の洗面・浴室が見える。
欄間ガラスに文字が残る水まわり。
奥にはモザイクタイルの床が続き、当時の面影が色濃く残っている。
旅館 橋本の香の水まわりに残るモノトーンのモザイクタイル床。黒と白の小さなタイルが市松のように配置されたデザイン。
モノトーンのタイルの貼り方がモダンな印象

2階奥の階段からふたたび1階へ。出窓のここにもアールデコ調の美しいステンドグラスが。さまざまなパターンのガラスで彩られなんと贅沢なことか。

旅館 橋本の香の1階にある出窓のステンドグラス。アールデコ調の花柄や幾何学模様を組み合わせた色彩豊かなガラス装飾。
複雑な組み合わせな上にアールがかっていている。

 建物の囲まれた中庭も拝見。石灯籠などは当時のものだろうか。

旅館 橋本の香の中庭。石灯籠や石塔、苔むした大きな石が配置された静かな日本庭園が建物に囲まれて広がる。
建物に囲まれた中庭には石灯籠や石塔が並び、当時の面影を残す落ち着いた庭が広がる。
旅館 橋本の香の中庭に置かれた装飾タイル。青い花模様が描かれたタイルが苔むした地面と石の間にさりげなく佇む。
青い花模様の装飾タイルが中庭の苔の緑に映える。
旅館 橋本の香の中庭に置かれた装飾タイルとランタン。青い模様のタイルが土庭の一角で静かに存在感を放つ。
中庭の土庭にも青い装飾タイルがそっと置かれ、ほどよいアクセントに。
旅館 橋本の香の中庭に置かれた岩の手水鉢と、多彩な色のタイル片。さまざまな柄や色の古いタイルが石の周囲に並べられている。
庭に散見するタイル。新しいものではないと思うので、建物に使われていたものではないかと…

「橋本の香」に大興奮していたら、なんと並びの2軒も見学させていただけることに!(別途見学料金)棚ボタ見学です。棚ボタ床への期待も高まります。

美香茶楼の玄関タイルとレトロ意匠を楽しむ

京都・美香茶楼の外観。もとは第二友栄楼として建てられた木造建築で、格子窓や緑色タイル張りの外壁が特徴のレトロな店舗。
外の窓枠やタイルも美しい

2軒目は美香茶楼。元は第二友栄楼だった建物で現在は中国茶カフェとして活用されています。

美香茶楼の外壁に使われた深い緑色のモザイクタイル。上部には木枠の格子窓が組み合わされ、レトロ建築らしい素材の対比が際立つ。
外壁には深い緑のモザイクタイルが使用され、格子窓との組み合わせが建物の味わいを引き立てている。

ワクワクで足を踏み入れた玄関フロアは土間が一面タイル!壁もかわいいタイルだらけでタイル祭りです。全体的にアールデコ調だった「橋本の香」とはまた違い、こちらはちょっとエキゾチック。

美香茶楼の玄関土間。赤と生成りのタイルを組み合わせた幾何学模様の床が広がり、上がり框にはレトロな長方形タイルがあしらわれている。
玄関フロアは土間が一面タイルで彩られ、幾何学模様の床と段差部分のタイル装飾が印象的。
美香茶楼の玄関扉。色ガラスをはめ込んだ木製ドアと、その上部に飾られた扇形の欄間彫刻が印象的なレトロ空間。
色ガラスが入った木製ドアと、扇形の欄間彫刻が迎えてくれる美香茶楼の玄関。
「美香茶楼の玄関土間に敷かれた幾何学模様のタイル床。赤茶とクリーム色のタイルが連続する独特のパターンを描く。
なんとも愛らしいタイル。
美香茶楼の玄関土間と上がり框の境目。幾何学模様のタイル床から、丸く縁取られた段差のタイルと木床へと切り替わる意匠が特徴的。
式台の縁を彩る布目タイルも良い。
美香茶楼の室内に残る壁際タイル。赤とオレンジの小さなタイルを縦横に組み合わせ、木柱と調和するレトロな装飾が施されている。
配色も鮮やかな壁のタイル
美香茶楼の室内に残る装飾タイル。白い長方形タイルの上部に、緑色の花形モチーフを連続させた縁飾りタイルが配されたレトロな壁面。
白いタイル壁の上部には、緑の花形モチーフを連ねた装飾タイルが使われ、空間のアクセントになっている。

 玄関タイル祭りを終え、2階へ進みます。そこかしこにある意匠にいちいち足が止まってしまいます。

美香茶楼の2階廊下。木板張りの壁と床が続き、吊り下げ照明が柔らかく灯るレトロな通路の佇まい。
木の質感が続く2階廊下は、柔らかな照明に照らされて落ち着いた雰囲気。
美香茶楼の室内窓に施されたステンドグラス。枝にとまる鳥と揺れる葉を描いた色ガラスが、白いタイル壁の上に鮮やかに浮かび上がる。
要所要所にあしらわれている可愛いステンドグラスやタイル
美香茶楼の洗面台。タイル片を散りばめたモザイク調の天板や水色の縁取りタイルが特徴で、レトロな意匠が残る。
タイルを散りばめた洗面台は、細部まで遊び心がありレトロな魅力が詰まっている。
美香茶楼の壁に埋め込まれた装飾タイル。白いタイルの中央に、青と茶の花模様を描いたレトロなデザインタイルが配されている。
要所要所にあしらわれている可愛いステンドグラスやタイル

奥の階段からふたたび1階へ。急ぎつつも見落とさないよう視線を四方八方に巡らせます。

「美香茶楼の室内通路にある黒タイル張りの壁面。花柄の装飾タイルが一枚あしらわれ、下には古いランプや釜、鏡が飾られている。
タイルのポイント使いがかわいい。
古いジュウキミシン台の上に、朱色と黒色の箱枕の台が並べられている室内の一角。
鏡やミシンなどの生活用品は古いものなので遊郭時代のものだろうか。
ミシンの上にのっているのは箱枕の台ですよね?

1軒目2軒目で予定時間のかなりを費やしてしまいました。3軒目へ。

天女とステンドグラスが彩る旧加島楼の華やかな床空間

1軒目と2軒目の間にある旧加島楼(旧大徳)→御座敷と洋食スタンド大徳→喫茶・スナック大徳へと営業形態が変わっていったようです。

まだ改修中の建物です。3軒目がこれまた凄い! 天女にステンドグラスにタイルにとフルスロットル内装です。

旧加島楼のホールに残るステンドグラス装飾。中央に女性像を描いたステンドグラスと木彫欄間、その周囲をモザイクタイルの床と腰壁が彩るレトロな空間。
女性像のステンドグラスとモザイクタイルが組み合わさった、旧加島楼ならではの華やかなホール。
旧加島楼の天井に残る格子状の化粧天井と、下部に配置された女性像のステンドグラス装飾。
格子状に彩色された天井とステンドグラスが組み合わさった、当時の意匠が色濃く残る空間。
旧加島楼の一角に残るタイル壁とモザイク床、剥離した壁面に飾られた建物の絵、丸椅子と丸テーブルが置かれたレトロな空間。
赤いタイルとモザイク床が当時の趣をいまに伝えている。
旧加島楼の床。さまざまな色の小さなタイルを不規則に組み合わせたモザイク柄の床と、黒い靴を履いた人物の足先の様子。
絶妙な配色の乱貼りタイル床。
旧加島楼の内装で、赤とクリーム色のタイル壁を背景に、曲線的な背もたれの木製椅子が置かれている様子。
隣の美香茶楼でも使われていたタイル

1階に永遠にいたい気分ではありますが、時は有限なり。迫り来るタイムリミット。2階へ進みます。

旧加島楼2階、丸窓と円形ステンドグラスが並ぶ一角。外へ通じる扉があり、アールデコ調の意匠が特徴的。
丸窓と小さなステンドグラスが並ぶ2階の空間。アールの効いた壁面が当時の意匠を物語る。
旧加島楼2階、黄色と水色の色ガラスがはめ込まれた窓と、円柱の下部に貼られた青緑色タイルが特徴的な室内の一角。
色ガラスの連窓とタイル張りの円柱が並ぶ2階空間。
モダンさと和の要素が同居する独特の意匠が残されている。

3軒ともそうでしたが、妓楼は2階建てなのです。旧大徳は2階も素晴らしい意匠の空間が。なんとダンスホールだったそう。当時の気配を感じながらイメージを膨らませます。

旧加島楼2階、鳥や花のモチーフが描かれた円形ステンドグラスが縦に3枚並ぶ壁面の装飾。
鳥と花がモチーフの愛らしいステンドグラス
旧加島楼2階の壁に残る、大きな円形レリーフ装飾。剥離が進む表面に人物や楽器のモチーフが浮かび上がり、周囲の下地材が露出している様子。
楽器を演奏しているレリーフ
旧加島楼2階の廊下へ続く入り口。模様入りのすりガラスと色ガラスを組み合わせた引き戸越しに、奥へ長く伸びる木の廊下が見えている様子。
ガラスの色合わせやデザインが美しい引き戸。
旧加島楼2階の一角に残る大きなガラス窓。剥がれた壁の下地が露出し、室内には椅子や道具類が映り込んでいる様子が写っている。
鏡に書かれている文字が気になります。調べてもわかりませんでした。酒蔵の名前でしょうか
旧加島楼に残る色鮮やかなステンドグラス。着物姿の女性が描かれ、背後には山並みや花木がデザインされた一枚が窓枠にはめ込まれている。
着物姿の女性をモチーフにした華やかなステンドグラス。
旧加島楼の2階に残る、着物姿の女性を描いた色鮮やかなステンドグラス。
旧加島楼の美意識を感じる意匠が当時の面影を今に伝えています。
旧加島楼の外観。2階の窓に、着物姿の人物が描かれたステンドグラスが2枚並んでいる様子。
2階のステンドグラス。内側から見た感じと外観と。

建物の意匠に魅了されつつも決して華やかで楽しいだけの場所ではなかったわけで、きゃあきゃあと見ていていいのだろうか…と気後れする自分も抱えての見学でもありました。

でもこういうきっかけから色々知見が広がっていくというルートもありますよね。知る気持ちは持ち続けたいものです。

京都・橋本周辺で見つけた軒先タイルと野良床コレクション

まだまだ3軒を味わっていたいですが、奈良へ行かねばなりません。駅へ急ぎつつも周辺もチェックはしなければ。

予想どおりいい床を発見。

京都の軒先で見つけた四角タイルの床。水色・赤茶・薄緑を組み合わせた幾何学模様がおしゃれに並ぶデザイン。
駆け足で撮った軒先床たち①
京都の軒先に残る白地の六角形タイル床。赤・緑・黒などの小さなドットが規則的にアクセントを添えるレトロなデザイン。
駆け足で撮った軒先床たち②
京都の軒先に敷かれた青系六角形タイル床。薄いブルーと濃いブルーの組み合わせが爽やかな印象をつくるタイル模様。
駆け足で撮った軒先床たち③
京都の軒先に残るレトロタイル床。赤・白・ベージュの縦ラインが並ぶデザインで、木製の引き戸と相まって味わい深い雰囲気を演出。
駆け足で撮った軒先床たち④

こちらは野良床。遊郭跡でしょうか

京都の路地で見つけた、青と緑の小さなモザイクタイルが残る壊れた縁石の足元風景。
野良床①
京都の古い建物のトタン壁際に残る、赤茶と白のモザイクタイルが割れた足元の風景。
野良床②
京都の民家の土間に残る、茶色や青などのモザイクタイルが部分的に剥がれた床の風景。
野良床③

美味しそうな予感がする洋食屋さんもありました。

洋食店やをりきの入口に敷かれた細かな矩形タイル床。淡いブルーとベージュを組み合わせた上品なデザインが特徴。
淡いブルーとベージュを組み合わせた上品なタイル床。
洋食店やをりきの木製ドアとタイル張りのアプローチ。クラシックな外観と矩形タイルの床が魅力的な佇まい。
落ち着いた木製ドアとタイル張りのアプローチが、洋食店さん。
洋食店やをりきの外観。白壁に掲げられた店名看板と、格子窓やタイル外壁がレトロな雰囲気を漂わせている。
落ち着いた木製ドアとタイル張りのアプローチが魅力的な洋食店やをりき。

いい建物の周辺にはやはりナイス床がある確率が高し。美味しそうな食堂も見つけてしまい、再訪を予感しながらこの地を後にしました。

次回の床旅⑧では奈良編をご紹介します

今回は、今井晶子さんが京都・橋本周辺で出会われた建物と床の魅力をお届けしました。

遊郭建築ならではのタイル使いや光の取り込み方など、随所に残る意匠から当時の空気が伝わってくるようでした。

旅はこのあと奈良へと続きます。京都とはまた違った歴史や街並みのなかで、どのような床と出会われたのか。次回の「床旅⑧:奈良編」でご紹介いたしますので、どうぞお楽しみにお待ちください。

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