
犬でも高齢化が進み、寝たきりになってしまったり認知症を患ったりする高齢犬も増えてきました。
介護はいつまで続くか予想もできないため、ずっと全力投球していたら飼い主様が疲れてしまいます。
自分の生活や自身のケアをおろそかにしたり、楽しみを切り詰めた結果、介護ノイローゼに陥ってしまうことも。
この記事では、介護が必要になる犬の病気として認知症やさまざまな原因による寝たきりを取りあげ、治療法やケアのポイントを解説します。
また、訪問介護などの犬の介護サービスを紹介し、飼い主様の心身の負担を減らす方法を提案します。犬の介護にあたられている方は参考になさってください。
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もくじ
介護が必要になる犬の病気:①認知症

犬の認知症は12歳を過ぎた頃から発症する犬が多いですが、全ての犬が認知症を発症するわけではありません。
老化と認知症の違い
老化か認知症かを区別するポイントは、日常生活に大きな影響を与えているかどうかです。
老化による変化は、耳が遠くなったり、動きがゆっくりになったりというものがありますが、これらは加齢とともに徐々に現れ、日常生活のリズムが大きく変わるものではありません。
一方で、認知症による変化は脳の機能低下が原因で異常な行動が起こるため、犬自身や飼い主様の通常の日常生活を脅かすものです。
主な認知症の症状には以下のものがあります。
● 昼夜逆転
● 夜泣き
● 理由もなく吠え続けるたり、徘徊する
● 狭いところに入り込んで出られなくなる
● あちこちで粗相をする
治療
犬の認知症の治療には人の認知症の薬を使うこともあるのですが、基本的には犬の症状に合わせて抗精神病薬、抗不安薬、鎮静剤などを用います。
夜泣きで飼い主様も休めない場合は、睡眠薬を使って犬を眠らせます。
薬を使うことに罪悪感を感じる飼い主様もいらっしゃいますが、眠ることで犬自身も体力を回復することができるというメリットもあります。
介護が必要になる犬の病気:②寝たきり

犬が寝たきりになる原因として、以下のような理由が考えられます。
● 病気や加齢による全身の衰弱
● 筋肉や関節など、運動器の病気や衰え
● 事故や外傷
体位変換のポイント
寝たきりの犬のケアで飼い主様に負担がかかるものといえば、2,3時間おきの体位変換です。
体位変換は、床ずれの予防や、関節が固まってしまうのを防ぐ役割があります。しかし、床に寝ている犬を抱き起こし、向きを反対にするのは特に大型犬では一苦労です。
間違ったやり方をすると犬の体に負担がかかるだけでなく、飼い主様が背中や腰を痛める原因にもなります。
飼い主様の負担にならない体位変換の方法や、グッズを紹介します。
横向きに寝ている犬の体位変換の方法
① 後ろ足を折りたたみ両足を割って腰の下へ
② 前足を伏せの姿勢になるように、上半身を起こす
③ 体を反対の向きに倒し足を引き出す
犬の腰を支点に向きを変えるのがポイントです。
犬を仰向けにして向きを変えるのは、特に胃に内容物がある場合に胃捻転を起こす可能性もあるのでやめましょう。
犬と体をくっつけ、体全体で犬の体重を受け止める
腕だけで犬を持ち上げたり動かしたりすると腰に負担がかかります。犬と自分の身体を近づけて身体全体を使って犬の体重を受け止めるのがポイントです。
犬は、床ずれ防止のためにも体圧分散ができる低反発の介護用マットに寝かせるのが良いでしょう。

また、そのエリアは、クッション性のあるペット用マットを敷くと、飼い主様が膝をついてケアをするときに足腰に優しく、もし汚してしまったときも掃除がしやすくなります。
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体位変換グッズの使用
体位変換を便利にするグッズには、床ずれができやすい部位に当てるサポーター、食事タイムや横向き寝より伏せの姿勢が好きな犬用に顎を乗せて使えるU字クッションなどが販売されています。
ペットの介護でもおこる介護ノイローゼ

介護ノイローゼは、長期間の介護によって起こる身体的、精神的ストレスが原因となって慢性的な疲れや睡眠障害などの症状をおこす病気です。
介護が長引くと「いつまでこれが続くのか」といった不安が大きくなると同時に、そんな気持ちになってしまう自分自身を攻めてしまったり、金銭的な負担に対する心配も生じてきます。
介護ノイローゼの主な症状には、以下のようなものがあります。
● 慢性的な疲労感
● 眠れない
● 食欲の変化
● 物事にやる気が起きない
● 自分を責めてしまう
介護サービスを積極的に利用しよう

飼い主様が孤独な介護に陥らないように、毎日の介護をサポートするサービスや便利なアプリなどを紹介します。
訪問介護サービス
ペット介護の経験があるペットシッターが自宅に訪問し、食事や排泄の補助、体位変換などを介護してくれます。鍵を事前に預かることで飼い主様の外出中に介護をしてくれる業者もあります。
施設を利用するサービス
日帰りで介護を受けられるデイサービスや、宿泊を含むショートステイ、年単位で預けられる老犬ホームなど、介護の期間により様々なタイプがあります。
動物病院で提供されているサービス
動物病院で一時預かりや老犬ホームの運営を行っているところもあります。また、歩行訓練や補助マッサージ、温熱療法、水中トレッドミルを利用したトレーニングなどを病院スタッフが実施し、犬の健康維持をサポートしてくれるサービスがある病院もあるので、まずはかかりつけ病院に聞いてみましょう。
オンライン相談やカウンセリング
誰にも頼らず自分だけで介護をしていると、介護の方法に関する疑問や心の中の苦しい悩みも一人で抱えてしまいがちです。
気持ちが塞ぎ込んでしまう前に、獣医師やペット介護の専門家にオンラインで相談してみませんか。悩みを吐き出し、整理するだけで気持ちが楽になることでしょう。
アプリや介護用品の使用
どうしてもペットを残して外出しなければいけないときなどに便利なのが、見守りカメラの設置です。外出先でも犬の様子を確認できます。自動給餌機能がついたカメラも販売されています。
食事や犬の健康状態を記録できる介護記録アプリもあります。アプリに薬の情報を登録を残しておくと投薬時間にアラームが鳴ったり、アプリに記録を残すことで飲み忘れの防止にもなります。
ご自身の体調管理とケアの時間も大切に

介護は一人で抱え込まないことが鉄則です。まず、他のご家族や動物病院や介護サービスのフタッフ、オンラインの専門家でもいいので、相談相手を持ちましょう。
次に、時には犬と離れる時間を持ちましょう。
身軽になった時間にはご自身の好きなことをしたり、思う存分睡眠時間を取ったりして、疲れを溜め込まないようにしてください。きっとまた笑顔で犬のところに帰れるようになりますよ。
まとめ

この記事では、犬の長寿化に伴って増えてきている介護の問題を取り上げました。認知症や寝たきりの犬は介護が必要となり、飼い主様の心身的負担が大きくなります。
大事なことは、犬の介護を全て一人でこなそうとせず、介護サービスや動物病院など周りを頼って、時には犬から離れる時間を持つことです。
必要ならば獣医師から処方された薬を飲ませましょう。
犬を一生懸命お世話していらっしゃる飼い主様は抵抗があるかもしれませんが、飼い主様が笑顔で自分の世話をしてくれることが老いの時期を迎えた犬にとっては一番の幸せかもしれませんね。
\愛犬との大切な毎日に/
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安家 望美

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