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今井晶子の床ノススメ【床旅⑥:大阪床祭り 夏の陣】

床旅

今井晶子の床ノススメ【床旅⑥:大阪床祭り 夏の陣】

2025.09.08 (最終更新日:2025/09/08)

2021年ラグリエwebサイトオープン1周年》特別企画インタビューで直接お会いすることが叶い、そのご縁からラグリエ読みもので、今井さん書き下ろしコラムを掲載させていただいています。

今回の床旅は、昨年の夏と冬、2回に分けて床探しに出かけられた、今井さんの床旅レポート。『床旅:大阪床祭り 夏の陣』編です。

今宵も床追い人、今井晶子さんの世界を
どうぞお楽しみくださいませ。

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今井晶子の床旅 夏の陣[1日目]

冬に仕事で訪れた時はまさかこんなに間を空けずに来阪するとは露ほども思いませんでしたが、何ヶ月か住まないと回りきれないくらいGoogleマップにピンが立っている大阪。チャンスがあれば巡るしかありません。

まずは都島中央商店会へ。
『マツコの知らない世界』を見てお店の床の魅力に気づかれたという話を噂に聞き、伺ってみたいと思っていた昭和33年創業「理容ナカタニ」さんがあります。

ピンクとグレーのレトロなタイル柄が可愛らしい床と足元|昭和の香り漂う理容ナカタニの床風景
理容椅子とともに広がる昭和レトロな床タイル|都島中央商店会『理容ナカタニ』の店内風景
年月を感じさせない綺麗な床は手入れの賜物

おしゃれで可愛い奥さまとやさしい旦那さまに猫のトリオに迎えられ、中へ足を踏み入れるとピンクと水色のコンビがかわいい床が一面に…! 一度貼り替えたもので64年くらい経っているとか。

ここでご夫婦から耳寄りな情報が。近くに現存する日本最古で現役の鉄筋コンクリートの集合住宅「トヨクニハウス」があると。それは行くしかありません。

歩いていくと趣のある建物が見えてきました。住宅街にここだけ別の空間のよう。

道路沿いから見たトヨクニハウスの外観|昭和レトロな集合住宅が住宅街の中に異彩を放つ
蔦に覆われたトヨクニハウスの裏手全景|緑に包まれた建物に刻まれた長い年月が印象的
蔦の絡まりに年月を感じます

建物内で営業されているトヨクニコーヒーさんに入ってみたかったのですが、残念ながら営業時間前。

でも理容ナカタニのご夫婦のおかげで良き建物を見学できました。名残惜しいですが先を急ぐ旅ゆえ御免…!

トヨクニハウスの正面入口とレトロなコンクリ階段|現存する日本最古の鉄筋コンクリート集合住宅
トヨクニハウスの中庭側と営業前のトヨクニコーヒー|アンティーク雑貨と緑に囲まれたノスタルジックな風景
トヨクニコーヒーの入口ドア|味のある木製ドアにガラスの装飾が映える、歴史を感じる店構え
トヨクニコーヒーは1階が喫茶、2階がカフェと雑貨古着となっているようです

用事のため一旦京都へ。バス停へ急ぐ途中で床発見。棚ボタ床です。

足元に広がるレトロな円形タイル模様の床|大阪で偶然見つけた、温かみのある素敵な床デザイン
オレンジと白の円形タイルが並ぶ大阪のアーケード商店街の床風景|足元に広がる幾何学模様と営業中の幕が印象的
このタイルの貼り方も各地方でみかけ、色も様々です

さらに乗り継ぎの駅のそばでも発見。棚ボタ床ラッシュです。

行ってみなければわからない。それが床旅。

幾何学模様が浮かび上がる赤いタイル床と足元の風景|大阪で偶然見つけたスペーシーな雰囲気の床デザイン
赤とグレーの切り替えが印象的な幾何学タイル床|アーケードの下、偶然出会った棚ボタ床スポット
スペーシーな感じを受ける床

向かった先は京都のKBSホール。
ここに某ラジオ番組の公開収録を聞きに来たのです。

京都・KBSホールにある壮麗なステンドグラス|徳力彦之助・康乃夫妻による幻想的な装飾作品
ホールにはすごいステンドグラスが。
漆芸家の徳力彦之助・ 徳力康乃夫妻が製作されたものだそう。

KBSホールなんて来るのは最初で最後になる可能性もあるのでもちろん可能な範囲で床チェックも。

残念ながら床はなかったのですが、なにごとも一期一会の気持ちでアタック床チャンスです。

楽しい収録時間を満喫して、この日最後の目的地へ。
千日前のレジャー施設「味園ビル」です。

以前にも訪れたことがあり、すごい建物なのですが2025年に老朽化のため解体されることが決まったと聞き、もう一度見たかったのです。

味園ビルの夜の外観|ネオンサインと巨大な円形装飾が印象的なレトロビル
味園ビルの夜の外観
味園ビルの螺旋状スロープと緑の手すり|幻想的な曲線が美しいレトロ建築の内部
幻想的な曲線が美しいレトロ建築の内部
味園ビルのらせん構造と幾何学的な照明|幻想的な明かりと曲線美が印象的な建築空間
曲線美が印象的な建築空間

フォトジェニックすぎます。老朽化は仕方のないこととはいえ、こんな建物はもう現れないだろうなあ…と惜別の想いを抱えつつこの日の締めとなりました。

味園ビルのらせん通路を上から見下ろした風景|階下の池には鯉が泳ぐ異空間のような景色
階下の池には鯉も

今井晶子の床旅 夏の陣[2日目]

朝、そうもちろん喫茶店のモーニングへGOです。
珈琲館ボルボさんへ。

冬の陣の時は営業時間に間に合わなかったのでウキウキで足取りも軽やかに向かいます。

ベージュとブラウンの幾何学模様が連なる美しいタイル床と足元の風景|大阪・珈琲館ボルボの床
モダンなパターンのタイル
バナナとゆで卵、キャベツサラダが添えられたトーストモーニングセットとアイスコーヒー|大阪・珈琲館ボルボにて朝の喫茶時間」
大阪・珈琲館ボルボにて朝の喫茶時間

カウンター上の洋瓦と木の柱に民藝調な感じも受け、床や照明は北欧感もあり、それらが一体となった空間にうっとりしながらモーニングをいただきました。

かつてはお店のお客さんで、前オーナーからお店を引き継いだママさんの明るい人柄が朝をより爽やかなものに。

洋瓦を配したカウンターと、美しい食器がずらりと並ぶタイル貼りの棚|珈琲館ボルボの個性的な店内空間
民藝調のタイルを背景に並ぶ色とりどりのティーカップや食器|珈琲館ボルボの棚ディスプレイ
カウンター奥の棚に使われているタイルも素敵で、食器がより美しく見えます
北欧デザインを思わせる花型のペンダントライトが灯る喫茶店の天井|珈琲館ボルボの印象的な照明
珈琲館ボルボの印象的な照明

ボルボから移動し、冬の陣の時に臨時休業だったお店へ再度チャレンジもしました。懲りません。

でも残念ながらまたしても臨時休業の日に当たってしまい、やってしまったー!と崩れ落ちそうに。

お店に迷惑をかけないよう事前に電話したりすることはなるべく遠慮せねば…と思っているのでこういうこともあります。またいつか。懲りません。

次の目的地は日本橋にある「高島屋東別館」。重要文化財に指定されている建物は、今は「高島屋資料館」とホテル、フードコートとして活用されています。その建物前にすごい床があると聞いていたのです。

予想を遥かに超えたスケールの床に思わず声を出しそうに。テラゾーという人造大理石の床で、これは圧巻。

テラゾー素材の床に施された赤と黒のアカンサス模様と足元の風景|大阪・高島屋東別館前の圧巻の床デザイン
赤い矢印のようなパターンは「アカンサス」という植物がモチーフ。
高島屋東別館のエントランス前に広がる幾何学模様のテラゾー床|赤いアカンサス模様がアクセント
歴史ある高島屋東別館の外回廊に続くカラフルなテラゾー床|幾何学的なパターンが美しい歩道
幾何学的なパターンが美しい歩道

フードコートが入っている建物1階も見学させていただきます。滞在型ホテルも入っているので外国の方の利用が多い感じでした。

大理石の壁と赤い絨毯階段が印象的な高島屋東別館1階ロビー|重厚な装飾が美しい昭和初期建築の内装
大理石が壮麗な1階
アカンサスの葉をモチーフにした繊細な装飾と幾何学模様の照明が並ぶ天井|高島屋東別館1階の意匠
大理石の壁に映えるアカンサス柄の装飾通風口|高島屋東別館のクラシカルな意匠が印象的な1階ホール
床と同じくアカンサスの葉をモチーフにした天井や通風口。
百貨店創建当時の面影を残す天井照明パネル|装飾的な幾何模様が美しい高島屋東別館の意匠
天井照明パネルは百貨店が創建された時のものだそう。

3階にある資料館の展示も鑑賞しに。企画展とアーカイブ展示室があってアーカイブ展は高島屋の歴代ローズちゃんやポスターなどの展示がありました。

展示室の奥に進むと素晴らしいエレベーターホールの見学もできます。

重厚な大理石と黒の装飾が美しい高島屋東別館のエレベーターホール|アールデコ様式の意匠が際立つ3階の資料館スペース
レトロな丸形階数表示と幾何学模様の装飾が印象的な高島屋東別館のエレベーター|歴史的建築の細部意匠を間近で堪能
資料館の奥にあるエレベーターホール。ここにもアカンサスモチーフが
高島屋の歴代ローズちゃん4体のフィギュア展示|制服の移り変わりから時代の雰囲気を感じられるアーカイブ展示
高島屋といえばローズちゃん

高島屋が楽し過ぎて思いのほか長居となりました。次の目的地「COFFEE VIP」へ急ぎます。

COFFEE VIPは書籍『足の下のステキな床』に掲載されている床がある喫茶店で7年ぶりの訪問となりました。床生存確認です。ママさんの推し活競馬コーナーも変わらずで嬉しいひとときを過ごしました。

赤とベージュの曲線が連なるモザイクタイルと足元の風景|COFFEE VIPの入口にある印象的な床
COFFEE VIPの外観と赤いタイル床|レトロな雰囲気の喫茶店の入り口には犬の置物も
入り口にあるキュートなタイル
グラスを方に載せて持ち上げる人物型のグラスに入ったピンク色のイチゴヨーグルトドリンク|COFFEE VIPの店内にて
おすすめのイチゴヨーグルト

次の「パンとエスプレッソと堺筋倶楽部」はCOFFEE VIPから徒歩圏内。

昭和6年に川崎貯蓄銀行大阪支店として建てられた建物を利用したお店です。昭和初期の銀行建築らしい華麗な外観です。

昭和6年築の川崎貯蓄銀行大阪支店の建物を活用した『パンとエスプレッソと堺筋倶楽部』の外観|クラシカルな石造りの建築と赤い日よけが印象的
クラシカルな石造りの建築と赤い日よけが印象的

中に広がる素晴らしいモザイクタイル。

3階まで吹き抜けになった開放的な空間や当時の装飾を生かしつつリノベーションされてモダンなカフェになっていました。

パンとエスプレッソと堺筋倶楽部」入口に敷かれたモザイクタイルの床。オリーブグリーンとキャメル色の幾何学模様がクラシカルな雰囲気を演出。
こんな柄のニットがあればと思わせる床
白地にアクセントとして幾何学模様があしらわれたモザイクタイルの床。整然と並ぶ細かなパターンが建物の歴史を感じさせる。
「パンとエスプレッソと堺筋倶楽部」店内に広がる細やかなモザイクタイルの床。カウンターの曲線に沿って敷かれたタイル模様が美しく調和。
カウンターの曲線に沿って敷かれたタイル模様が美しい
装飾天井とシーリングファンが設置されたパンとエスプレッソと堺筋倶楽部のホール内観
ステンドグラスの時計と分厚い扉が印象的な、旧金庫室を利用した堺筋倶楽部のインテリア
美しい装飾の天井や元金庫

美味しそうなメニューばかりだったのですがこの後のこともあり、でもせめてプリン、プリンだけでも…とオーダーしてしまいました。ここで欲張ったことをこの後すぐに後悔する気が…でも食べてしまったものは仕方がない!

銀皿にのったプリンとアイスティーが映える、葡萄模様の白いタイルテーブル
魅惑のプリンでした

次はいよいよ今回の夏の陣最後の目的地「ベトナム料理 インドシナ」です。

こちらの床は古いものではないのですが、ベトナムのセメントタイルが使われていると聞いて以来ずっと来てみたかったお店でした。

ベトナム料理店「インドシナ」の床に使われている、装飾的なベトナム製セメントタイル。丸い文様と植物モチーフが印象的。
ベトナムのセメントタイルはこの数年でみかけることが 増えました
ベトナム料理店「インドシナ」の店内風景。照明や鳥籠など、ベトナムを思わせるインテリアが並ぶ。
照明や鳥籠などベトナムを思わせるインテリア

夕食に軽めのセットをオーダーしましたが前に食べたプリンのボディーブローがここで効いてきます。食べるか食べないか “ご利用は計画的に” です。

ベトナム料理店「インドシナ」のランチセット。生春巻きやスープ、小鉢料理が丁寧に盛られている。
早い時間だったので贅沢に貸し切り状態でした

予定をやり遂げた満足感と満腹すぎるお腹に心の中でガッツポーズしながら、新幹線のシートに身を沈めて爆睡しながらの帰路となったのでした。

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今井晶子

グラフィックデザイナー。愛知県出身。書籍やパンフレットなどエディトリアル・デザインを中心に活動中。
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