
犬の7歳は人間の約60歳にあたり、シニア期といわれる年代に入ります。若いころと違って、足がよろけたり、段差を踏み外したりして怪我をすることもあります。
今回は、シニア期をむかえた愛犬が老後を快適に過ごせるよう、床材を始めとした室内の環境づくりや、便利な介護用品を紹介します。犬の介護中の方、そろそろ犬がシニア期に差し掛かってきたという方は参考になさってください。
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もくじ
犬の老化のサイン

老いによる犬の変化は、各臓器や器官の働きが悪くなることや、視覚や聴覚などの感覚の低下が原因です。これらのサインに気づいたら、生活を見直していきましょう。
体の変化
・顔周りから白髪が増えてくる
・体形が変わる
・被毛のふけやパサつきがめだつ
・全身にイボができる
・口臭がする など
心の変化
・関心や意欲が低下する
・怖がりになる
・新しいものを受け入れるのが苦手になる
など
行動の変化
・耳が遠くなり呼んでも気づかない
・寝ている時間が増える
・歩いたり階段を降りるのが苦手になる
・粗相をする など
体の衰えは後ろ足から現れる
犬の筋力低下は腰やお尻周りの筋肉から始まります。
上から犬を見たときに、お尻が小さくなったと感じるのは、そのあたりの筋肉が落ちやすいからです。
筋肉が減ると動作の踏ん張りがきかなくなったり、つまずいてしまったり、歩幅が狭くなるといった変化が見られます。
安全と快適さに配慮した環境づくりのポイント

老犬には子犬のように刺激がいっぱいでわくわくする空間づくりは必要ありません。
大切にしたいのは、事故が起こらない安全な空間づくりや、ストレスのない快適な空間づくりです。
犬の老いによる変化に寄り添い、できることから環境を整えていきましょう。
床の素材選び
老犬は足が上がりにくくなるため、低反発のように沈み込んでしまう素材は避けましょう。
タオル類を敷くのは、糸の部分に爪が引っかかったり、滑って歩きにくいかったりするのでやめましょう。
ある程度の硬さと弾力があり、表面が平らな床材を敷くのがおすすめです。
フローリングは老犬には負担が大きい
フローリングは掃除がしやすく清潔を保ちやすいといったメリットがありますが、老犬にとっては滑りやすく、踏ん張りがきかず足や関節に負担がかかるといったデメリットがあります。

シニア期のワンちゃんには、滑りにくくクッション性のあるラグリエのペットマットがおすすめです。
足腰の負担を軽減し、関節を守るため、歩行や寝転がる際も安心で、撥水性があり、お手入れも簡単なのでトイレの失敗が増えるシニア犬にも最適です。
さらに、床冷えを防ぎ、段差をなくして安全な環境を整えることができます。愛犬が快適に過ごせるよう、ペットマットでサポートしてあげましょう。
\お手入れ簡単!フローリングよりも滑りにくい/
室内の配置
老犬が過ごしやすいようにと急に家具の配置を変えると、つまずいたりぶつかったりして思わぬ事故を招く可能性があります。
レイアウトは大きく変えず家具の角にカバーを付けるなどして事故の予防対策を取りましょう。
階段や段差の対策
ソファや玄関の上り口にはスロープや小さいステップを置いて段差を小さくし、足腰にかかる負担を減らしましょう。
階段の上と下にはガードを設置し、転落事故を予防してください。
介護のアイデアグッズ

弱くなった筋力をカバーしたり、犬の安全を確保するために様々な介護グッズが販売されています。
グッズを使うことで、飼い主様にかかる体の負担が軽くなるというメリットもあります。積極的に活用してみてください。
介護用ハーネス
足が弱ってきて、歩く時によろけてしまったり、排泄のときに踏ん張りがきかずに用が足せなくなったりしたときは、介護用ハーネスを活用しましょう。
介護用ハーネスには、前肢用、全身用、後肢用と3つのタイプがあって、飼い主様はリードや取っ手の部分を上に持ち上げて犬の足にかかる負担を軽くします。ハーネスをつけていても汚さずに排泄できるよう性別毎に販売されています。
オムツ
粗相が増えてきた、昼間お留守番する時間が長くトイレが心配という困りごとが出てきたら、オムツの着用を検討しましょう。オムツの着用は、片付けにかかる飼い主様の精神的な負担を軽減することにもなります。
オムツには、蒸れや不衛生さというデメリットもありますが、心配な時はお尻周りの毛を剃ったり、オムツの交換の頻度を増やしたりといった対応を取りましょう。
床ずれ防止グッズ
床ずれは、寝たきりの犬がずっと同じ姿勢でいることで、体重がかかっている部分の血行が悪くなってできる傷を言います。
ひどくなると皮膚に穴が開いて細菌感染を起こし膿が出てしまうこともあります。足首や肘、ひざなど、骨が出っ張っている部位にできやすいです。
床ずれは一度できるとなかなか治らないので、初期のうちから獣医師に相談して塗り薬などの治療をしましょう。
また、こまめに体勢を変えてあげることで同じ部位に圧がかかるのを防ぎましょう。寝床は床ずれ防止用に設計された、圧が分散できるマットがおすすめです。
小児用プール
意外に思われる方もいらっしゃいますが、小児用プールは老犬の介護で役に立つグッズの一つです。
認知症が進むと、一定方向にいつまでも歩き続けたり、ズリズリと這っていって家具などの狭い隙間に入り込んで出られなくなったりという事故もよく起こります。
そんなとき、犬を小児用プールに入れておくと、ぶつかっても安全で汚れた時の掃除もしやすく、犬の安全を確保することができます。
健康寿命を伸ばすために飼い主様ができること

健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されています。病気などで介護や支援を必要としている期間は健康寿命には加算されません。
年を取れば心身に衰えが出てくるのは生き物ならば仕方ない事ですが、老犬の状態に合わせて食事や運動に気を配り、健康寿命を伸ばすように努めたいですね。
食事、運動で飼い主様が工夫できるポイントを紹介します。
食事
老犬は基礎代謝の低下により肥満になりがちです。
肥満は病気にかかりやすくなるなど、犬の健康に大きな影響を及ぼしますし、健康づくりをしようにも体が動かしにくくなります。
年を取ると活動量が落ちるため、若いころと同じカロリーの食事をとる必要はありません。消化吸収がよく、飲み込みやすいフードを与えましょう。
運動
疲れやすいからと外に行くのを控えてしまうと、犬の筋力低下が進み、関節の動きもますます悪くなって、さらに動きたがらなくなるという悪循環に入ってしまいます。
散歩は、年を取ってからも体力づくりや気分転換のためにも重要です。
五感を刺激し、いつまでも若々しい気持ちでいてもらうため、例えば公園の行き帰りはカートに乗せて、安全な場所についたら地面に下ろしてみるといった工夫をして、犬を外に連れ出してあげましょう。
病気などで寝たきりになってしまった犬も、マッサージや屈伸運動を行い、硬くなった筋肉や関節を動かしましょう。
まとめ

この記事では、犬の老いに合わせた安全で快適な環境づくりや、介護用品の紹介、健康寿命を延ばすためにできる工夫を紹介しました。
・犬の体の衰えは後ろ足から出ることが多く、足のふらつきや歩幅の変化が見られる。
・床材は犬の足が弱ってきたのを感じたら早めに見直して、適度に硬さと弾力のある物を敷く。
・介護用のハーネスやオムツ、床ずれ防止グッズなどを使い、犬も飼い主様も負担のない介護生活を送るれよう心がける。
その犬にとっての快適さは、一緒に長い時間を過ごしてきた飼い主様だからこそわかってあげられる部分もあるはずです。
犬の老いは寂しさも感じますが、気持ちに余裕をもって明るく老犬の時期を過ごしましょう。
\シニア期のわんちゃんとの快適な毎日に/
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安家 望美

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